ローマ、マンハッタン、そして私たちの地球へ
世界の都市、スポーツ、エンターテインメントなどを、鮮やかな色彩とユーモアあふれる世界観で描き続けてきた3Dポップアートの巨匠、チャールズ・ファジーノ。
一目見ただけでも楽しい。けれど、近づいて細部を眺めてみると、建物の窓、人々の表情、道路を走る車、小さな看板など、画面のいたるところに新しい発見があります。
今回ご紹介するのは、そんなファジーノらしさを存分に楽しめる新作たち。
永遠の都ローマの名所と日常が一枚に凝縮された「ローマに夢中」。
ニューヨーク・マンハッタンを巨大なリンゴとともに描き、4つの異なる色彩で展開する「デリシャスリー・マンハッタン」。
そして海、氷山、動物、宇宙までをひとつの円の中に収めた「ディスカバー・アワー・ワールド」。
都市の魅力を祝福する作品から、私たちが暮らす地球そのものへ。
それぞれ異なるテーマを持ちながらも、そこには「世界には、まだまだ面白いものがある」という、ファジーノならではの視線が感じられます。
「ローマに夢中」― 永遠の都を歩く楽しさを一枚に

まずご紹介するのは、イタリア・ローマを舞台にした「ローマに夢中」。
ファジーノの作品では、ニューヨークをはじめ世界各地の都市がたびたびモチーフとなります。しかし彼が描く都市は、実際の地図をそのまま再現したものではありません。
その街を象徴する建築物、歴史、文化、人々の暮らし、観光、ファッションなどを組み合わせ、「その街らしさ」を一枚の画面へ凝縮していきます。
本作でも、画面中央にはローマを代表する名所が次々と登場します。
スペイン広場の階段、トレビの泉、コロッセオ。歴史ある教会や街並みが幾重にも重なり、その間を人々や車、馬車、自転車が行き交います。
古代ローマから現代まで、異なる時代が同じ空間の中に同居しているのも面白いところです。
画面の上空に目を向けると、雲の中には古代神話を思わせる神々の姿。さらに街にはレストランやジェラートショップ、ブランドショップなどが並びます。
つまりここで描かれているのは、単なる「ローマの観光名所一覧」ではありません。
古代遺跡があり、宗教建築があり、美術があり、ファッションがあり、食があり、そこを今日も人々が歩いている。
数千年にわたる時間が現在の日常へそのままつながっているローマという都市の面白さが、ファジーノらしい賑やかな構成によって表現されています。
そして、作品をじっくり見れば見るほど「こんなところにも人物がいた」「こんな看板が描かれていた」と発見が続きます。
旅行から帰ってきたあと、写真を眺めながら街の記憶を思い出すように、何度でも画面の中を旅することができる作品です。
「デリシャス・アップル」― ニューヨークを丸ごと味わう巨大なリンゴ




https://www.fazzino.jp/guide/3Dart/Its-Deliciously-Manhattan
続いては、ファジーノ作品の中でも非常に相性の良いモチーフであるニューヨークを描いた「デリシャス・アップル」。
画面の中央で圧倒的な存在感を放っているのは、巨大なリンゴです。
ニューヨークの愛称といえば、もちろんThe Big Apple。
その言葉を文字通り巨大なリンゴとして描き、その周囲にマンハッタンの街をぎっしり詰め込んだ、ファジーノらしいウィットに富んだ作品です。
リンゴの後ろには、自由の女神、エンパイア・ステート・ビル、クライスラー・ビルをはじめとするニューヨークのランドマークが所狭しと並び、劇場街を思わせる看板、ミュージカル、ショッピング、近代建築、教会、交通網……。
さらに下部には橋や道路、フェリーなどが配置され、巨大都市ニューヨークがひとつの生き物のように画面全体へ広がっています。
このような街の見どころがぎゅうぎゅうに詰められた様子もファジーノ作品の大きな魅力です。
遠くから眺めれば、「巨大なリンゴとニューヨーク」という非常にシンプルで印象的な構図、ところが近づけば、無数の建物や広告、車、人々が描き込まれていて、一枚の中にいくつもの小さな物語を見つけることができます。
同じ作品なのに、まったく違う表情。4つの「マンハッタン」
今回の「デリシャス・アップル」の面白さは、同じ構図をベースにしながら、リンゴの色が異なる4種類が制作されていることです。
イエロー

鮮やかな黄色のリンゴが中央に浮かぶバージョン。
明るく開放的で、ポップアートらしい楽しさがもっともストレートに感じられる一枚です。
青い空とのコントラストも鮮やかで、ニューヨークという街が持つエネルギーや前向きな印象を強く感じさせます。
レッド

“The Big Apple”という言葉から、多くの人が最初にイメージするのはこちらかもしれません。
真っ赤なリンゴが画面の中央を占め、周囲の街並みまで一段と華やかに見えてきます。
存在感が強く、見る人の視線を一瞬で引きつけるカラーです。
グリーン

同じ構図でも、リンゴが鮮やかなグリーンになるだけで印象は大きく変化します。
赤や黄色とはまた違う爽やかさがあり、現代的で遊び心のある雰囲気。
背景に描かれた色鮮やかなニューヨークとも不思議な調和を生み出しています。
モノクロ

そして4種類の中でも特に異彩を放つのがモノクロバージョンです。
華やかな色彩を特徴とするファジーノ作品だからこそ、色を抑えた世界には独特の新鮮さがあります。
色彩ではなく、建築物の形や線、画面の密度、リンゴの巨大さといった「構成そのもの」がより強く浮かび上がります。
同じデザインであっても、色が変われば作品の印象は大きく変わり、その違いを考えながら見比べることも、今回の作品を楽しむポイントのひとつです。
「ディスカバー・アワー・ワールド」― 私たちの世界をもう一度見つめる

最後にご紹介するのは、これまでの都市作品とは少し異なるテーマを持つ「ディスカバー・アワー・ワールド」です。
円形の画面の中に広がるのは、海、氷山、山々、そして宇宙。
水面にはシャチやイルカ、氷上にはホッキョクグマやペンギン。そして水中へ目を移せば、大きなクジラを中心に、ウミガメ、サメ、タコ、クラゲ、色鮮やかな魚やサンゴが描かれています。
上空には月や惑星、流星まで登場します。
一枚の中に、海中から地上、空、そして宇宙までがつながり、ここでもファジーノらしい「見つける楽しさ」は健在です。
しかし「ローマに夢中」や「デリシャスリー・マンハッタン」と比べると、本作から受ける印象は少し違います。都市を形づくる建築物や人間の文化ではなく、ここで主役となっているのは、私たちが暮らしている世界そのものです。
巨大なクジラも、小さな魚も、氷の上を歩く動物も、遠くに浮かぶ惑星も、一つの大きな世界の中に。作品タイトルの「ディスカバー・アワー・ワールド」という言葉も、「まだ知らない場所へ行こう」という意味だけではなく、普段見過ごしている世界の豊かさを、もう一度発見してみようという呼びかけのようにも感じられます。
ファジーノの作品は「見て楽しい」「探して楽しい」アート
今回の3作品を並べてみると、題材は大きく異なります。
ローマという歴史都市。
マンハッタンという巨大都市。
そして地球と自然。
しかし、その根底には共通するものがあります。
それは、これまでの世界や文化を描き、後世に伝えるという意志です。
ファジーノの作品は、一度見て終わる作品ではありません。
少し離れて全体を見る。
今度は近づいて、小さな人物を探してみる。
建物を見る。動物を見る。文字を読む。
そして、しばらく経ってからもう一度見ると、以前は気づかなかったものが目に入ってくる。
まるで街を歩いているときのように、見るたびに新しい発見があります。
ぜひ絵の中に散りばめられた小さな発見を体験してみてください!














