今回の記事では人間の本質をついた作品をユニークな視点を持った作者の解説付きでご紹介していきます。ぜひ最後までお付き合いください。
セルフ・ポートレート

この絵の中で人生の大切な瞬間だと思う時期の自分自身を描きました。それは、この絵を描く数年前、以前の仕事に没頭し、コンピューターの画面の前で毎日を過ごしていた頃の自分です。もしかすると無意識のうちに、まさにこの時が「人生を変え、絵に専念しよう」と決意した瞬間だったのかもしれません。仕事が自己表現の自由を与えてくれると思っていた一方で、実際には仕事に囚われているように感じ、仕事の中で自分を探しても見つけることができませんでした。
まさにパソコンと向き合い続けることが多いこの時代、この絵に共感する人は多いのではないでしょうか。
自己実現というのは、そもそも実現した自己があってのものですが、その自己のイメージは大体周りから与えられる情報によって歪められていることが多々あります。
この絵は仕事に集中し、何かを達成することが成長であり喜びであるという植え付けられた理想から作者が解放されたとても貴重な瞬間を描いています。
不完全な風景

鮮やかで明るい色彩に満ちた風景は、人間の存在によって不完全なものへと変えられてしまう。人間は、その時々の誤ったニーズだけに目を向けるあまり、灰色の色合いや直線的・角ばった線で自然を歪め、取り返しのつかないほど損なってしまうのだ。
最近の社会ではなにごとも完全であることが求められています。何かひとつでもミスをすれば、バツ印をつけられ、場合によっては再起不能まで追い詰められる人もいます。
しかし、人の不完全を押し殺す社会が本当に完全だと言えるでしょうか。
我々は完全性を求めるあまり、不完全で歪な風景を生んでしまっているのではないか、そのようなことを考えさせられる一作です。
固定概念

頭の中にあるあるアイデアが、どうしても消えないときがあります。それは仕事上の目標でも、個人的な野心でも、誰かへの恋心でも、何にでもなり得るし、同時に何でもないものかもしれません。しかし、それが執着のようにそこに存在しているのであれば、必ず理由があるはずです。そしてそれを理解するかどうかは、私たち自身にかかっています。なぜなら、何らかの形でそれを取り除かなければならないからです。
仏教にも自縄自縛という言葉があります。何かに執着するあまり自分自身を追い詰め、身動ぎひとつ取れなくなっている心の状態をいいます。
この絵を見たときに感じたのはまさにその言葉でした。
何か自分の中で苦しみが感じられるなら、無自覚にも人は間違いなく何かに執着しています。
そしてその執着から脱するためにはまず自分自身と向き合い、その原因に気付き自覚しなければなりません。
しかしこの絵では、まるで何も頭に刺さっていないように歩いていて、私にはこれが痛くて苦しいはずなのにいまだにその原因に気付き向き合おうとしない人物を表しているように思えます。そのような教訓めいた要素のある面白い絵だと私は思います。
家族の肖像 #13

これは何度も取り上げてきた題材です。家族という存在を、その本質において描いていますが、必ずしも“自然な家族”というわけではなく、ただ単に二人以上の人々が共に社会性と結束という祖先から受け継がれてきた欲求を満たす姿として表現しています。家族の構成員以外には自然の要素しか描かれておらず、それによって「一緒に過ごし、お互いを思いやるのに、ほかには何も必要ない」というメッセージを伝えようとしています。
家族に対する作者の認識がとても色濃くあらわされた一作だと思います。
「ただ単に二人以上の人々が社会性と結束を満たすと、それが家族」というのは、一見してこの絵に描かれている人々が家族に見えたり見えなかったりする理由となっていると思います。
多様性が叫ばれる現在において、作者にとっての家族というものが描かれた興味深い作品です。
マトリックス

マトリックスとは、私たちが生まれる前から存在し、私たちを形作り、皆を同じようにしてしまう外殻のことです。かつては宗教がそのマトリックスに形を与えていましたが、いまでは市場(マーケット)がそれを担っています。では明日、他者を支配しようとする人間の欲望は、どのような名前を得るのでしょうか?
我々は生まれながらにして生まれた国や家族の文化によって心身形成されています。
今は僻地の狩猟民族でもない限りは、大量消費社会の広告の渦に巻き込まれ、気づかぬうちにいつも流されています。
このような状況から次にはどのような社会基盤が生まれ、世界が変わっていくのでしょうか。
少なくともこの絵のように無機質に形作られるような世界なら絶望的であるというようなことが表現されているように思います。
ハイスピリッツ&ユウからのメッセージ
以上、5作のROMANsアートをご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?
ROMANsアートは絵そのものもですが、みている内にこちらも何か根源的なテーマを考えさせられる思いがして、また新たな気づきを与えてくれる絵画です。
今後、「ROMANs」作品につきましては、原画の国内取扱いをはじめ、展覧会の企画、企業様とのタイアップ/ライセンシーの募集、アニメーション動画制作などを通し、皆様に愛されるアート・ブランドへと成長することを願い、幅広くプロモーションを行なってまいります。
これからも「ROMANs」作品をどんどんご紹介してまいりますので、そちらもお見逃しなく!